医療大麻に関する情報発信を行っていて、最も多い問い合わせに『どのCBD製品がおすすめですか?』というものがあります。ここ1年の間に、ネットでは CBD製品を販売する業者さんの数が増えました。その中から、どの製品を選べばいいのか? というのは難しい問題です。
Green Zone Japan は科学的根拠に基づいた情報発信を旨としており、臨床試験の行われていない製品に関しての個別のコメントは控えています。サイトでのアフィリエイトも、利益相反の観点から行っていません。それでも一般論として、CBD製品を選ぶときに考えるべきポイントに関してお伝えしたいと思います。
① まずは本当にCBDがベストな選択肢なのか検討しましょう
日本人で CBD の使用を考えている場合、何らかの病気を患われているケースが多いと思われます。まずはその病気や症状に対して、CBD の適応があるかどうか、そしてその他の治療手段はないのかを検討しましょう。
医療大麻は、カンナビイドやその他の様々な成分が、相乗作用によって医療効果を発揮すると考えられています(※アントラージュ効果)。医療大麻が効くと報告されている症状の多くは、THC やその他のカンナビノイド、テルペンの類も一緒に摂取されている場合がほとんどです。ところが日本で販売されているCBDオイルは、大麻取締法の規制によって THC を含まず、原料も産業用ヘンプの「茎」のみであるため、大麻草全草を原料とするものと比べて微量成分の組成が異なります。
「(大麻草全草から抽出した)医療大麻が効く病気」と「単体の CBD が効く病気」はイコールではありません。たとえば神経痛などの従来の薬が効きづらい痛みは、医療大麻の良い適応ですが、CBD 単体での研究成果は乏しいのが実情です。
またCBDが効くとされる症状であっても、第一選択になるかどうかは検討した方がいいでしょう。たとえば、てんかんや統合失調症、不安障害に対して、従来の治療で効果が不十分な場合、もしくは副作用が強く継続が困難な場合などは、CBDは有力な選択肢の一つだと思われます。一方で、たとえばパーキンソン病は、CBDの適応疾患として研究されていますが、その効果は現時点でははっきりしません。くわえて、パーキンソン病の治療には、保険診療の範疇でも多くのバリエーションがあります。
現時点で CBD の投与を考えるべきケースは極めて限られます。
がん治療に関しては、動物実験で抗がん剤と併用すると寿命が延びたという報告はあり、標準治療(手術、抗がん剤、放射線)との併用は検討してもいいのかもしれません。しかし、CBD単体投与でがんが完治するなどの、極端な期待は抱くべきではありません。現在日本で流通している CBDオイルは、欧米では「健康サプリメント」に分類されるものであって、生産者も流通ルートも、医療大麻とは別のものであることは知っておきましょう。
② 1本あたりのCBD含有量を確認しましょう
CBDオイルを摂取されている方の中には、濃度が高い製剤の方が効くに違いないと考えられている方が多くおられます。しかし医学的に重要なのは製剤の濃度ではなく、摂取するCBDの成分総量です。
たとえば濃度が 10%の CBDオイルを1 ml (≒ 1000mg) 内服するのと、5%の製剤を 2 ml 内服するのとでは、摂取しているCBDの成分量は同じであり、理論上、同じ効果が期待できるはずです。ですから、1本のボトル中にどれだけのCBDが含まれているかを把握することが大切です。
CBDの含有量は、〇〇mg/〇〇ml もしくは △△%と書かれています。〇〇mgの場合は、表記されている量がそのまま、1本のボトルに含まれるCBDの総量です。%表示の場合は、オイル 1 ml 中に、その数字の10倍(mg)のCBDが含まれています。たとえば濃度が 5%であれば、5 x 10 = 50 mg/1ml、15%であれば 150 mg/1ml です。なので1本のボトル中に含まれるCBDの総量は、1 ml あたりの CBD成分量 × 1本あたりの容量(オイル量)で計算が可能です。
③ 成分単位価格を計算し、コスト・パフォーマンスを考えましょう
CBDオイルと一言で言っても、価格には差があります。CBDは魔法の薬ではないので、一回飲んだら病気がたちどころに消えるということはありません。効果がある場合、摂取を継続する必要があります。そのため、値段の問題は非常に重要です。
先程計算した 1本あたりのCBD成分総量と価格から、コスト・パフォーマンスを計算してみましょう。たとえば、成分量 500mg で 6,980円 の商品があったとします。その場合の、CBD 1mg あたりの値段は
6980円 ÷ 500mg = 13.96円/mgとなります。
製剤の原価というのは CBD の含有量だけでなく、原料となる大麻草の生産工程や原産国、抽出方法などによって変化します。そのため適正価格というのは、一概に CBD 含有量だけでは言えません。しかし、中にはこの成分単位価格が 140円/mg に近い製品も販売されています。これは「値段が高いものの方がよく効きそう」という消費者心理につけ込んだ値段設定なのかもしれません。高価なものの方が効くとしても、それは気のせいであり CBD の作用ではありません。(医学的にはプラセボ効果と言います。)
④ 成分表を確認しましょう
確認するべき点は、まだあります。
以下の表は、オランダで行われた CBDオイルに関する調査の結果です。販売されている商品の成分を検査してみたところ、16商品中、9商品ではラベルに表示されている量のCBDが実際には含まれていませんでした。
このようなケースを避けるため、購入に際しては、成分分析表を確認することをお勧めします。きちんとした会社は、自社製品を第三者機関に検品してもらっています。会社によっては分析結果のコピーを商品に同封して送ってくれます。
継続して購入を検討する場合、成分表を送ってくれるよう頼みましょう。
また表示通りの CBD が含有されているかに加えて、農薬や重金属などの人体に有害な物質が含まれていないことも確認しましょう。
⑤ 困ったとき、疑問があるときは販売業者さんに問い合わせましょう
実際の使用に関して、製品の詳細に関してなど、疑問や質問がある場合は、業者さんに直接確認しましょう。どこの販売業者さんも、ホームページに問い合わせの連絡先を記載しています。
ただし、問い合わせにも作法というものがあります。実際に我々のところにも質問が届きますが、中には回答に窮するケースも少なくはありません。たとえば、がんと CBD について教えてください、という問いは漠然とし過ぎています。質問する場合は、自分が知りたいことを明確化し、どのような病気のどのような症状に対して、どのような成果を期待しているかなど、なるべく具体的に記載するべきでしょう。
このように、CBD による治療を希望する場合、患者さんは能動的に行動する必要があります。それは面倒かもしれません。
しかしこのような姿勢は、患者さんに主体性と尊厳を取り戻してくれます。それこそが、医療大麻の持つ魅力のひとつだと、デイビット・カサレッド博士は TED TALK で語っています。
本来、医療とは患者さんの主体的な回復を支える支柱のようなものです。病院で治してもらうのではなく、自らの力で治る。CBDや医療大麻を通じて、私はそんな医療の本質を再発見しています。
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