2020年秋の合衆国大統領選まで、あと1年少しとなりました。
候補者の顔ぶれを見ると、民主党候補が勝てば連邦法での大麻の合法化は間違いないと思われます。
連邦法が大麻をスケジュール I に分類している現状では、大企業は大麻産業に手出しが出来ないようです。実際に、大麻を販売するディスペンサリーではクレジットカードが使えないため支払いはすべて現金ですし、販売業者は売上を銀行に預けることも出来ません。行き場のない売上金を狙った強盗を恐れて、現金を土の中に埋めているという噂を耳にしたこともあります。
しかし連邦法が変われば、一夜にして大企業が参戦してくることは間違いがありません。その筆頭格として、着々と準備を進めているのが Amazon です。以下に、私がそう考える理由を説明します。
(1) Amazonは小売業界と運送業界の二冠を狙っている
最近、ビジネスの世界で耳にする機会が増えた「GAFA」という言葉。これは現在の市場を席巻する「四騎士」こと、Google、Amazon、Facebook、Apple の頭文字を組み合わせて作られた造語です。GAFA についての世界的ベストセラーを著したスコット・ギャロウェイ氏は、Amazon の今後の戦略に関して大変興味深い指摘を行なっています。
「Amazonは、その巨大な資本力を駆使して、他が真似できないサービスを展開し、小売業界を独占しようとしている」と言うのです。事実、アメリカでは Amazon は、全国規模のスーパーマーケット「ホールフーズ」を買収し、運送業への参入も開始しました。
倉庫から個人宅までの「ラストワンマイル」と呼ばれる、最も配送コストがかかる部分で、アマゾンは圧倒的な設備投資によってコストを限界まで下げ、より安く、より速くの軍拡競争を仕掛け、競合相手をマーケットから駆逐しようとしています。なんと、ドローンによる「空飛ぶ倉庫」の導入すら真剣に検討していると言われています。
現状では、大麻ユーザーは手持ちの製品が切れたときには、車を運転しディスペンサリーまで遠路はるばる買いにいかねばなりません。ところがこれが仮に Amazon なら、一度年齢認証が済めば、あとはワンクリックで即日、自宅のソファーの上まで届けてくれます。しかも配送料は無料です。そんな便利な仕組みを、その気になれば Amazon は2週間で実装することが可能とも言われます。その障害となっているのは連邦法だけです。
小売業と運送業。二階級の覇者を目指すAmazonにとって、急成長する大麻業界が「金の卵」であることは間違いありません。
(2) Amazonは連邦法を変えるために出資している
日本にいると実感しづらいですが、アメリカでは慈善活動の一つとして寄付が盛んです。
Amazon も、「Amazon Smile」という仕組みを導入し、カスタマーがAmazon Smile を経由して購入した売上の 0.5% を顧客の指定する団体や組織に継続的に寄付しています。(残念ながらAmazon.jpでは使えません。)
2013年の運営開始から 2018年までの5年間で、この仕組みによって Amazon が行なった寄付は1億ドル(約 100億円)を超えたと報道されています。つまり、単純に年間20億円以上の寄付を行なっていることになります。そして、寄付を受け取る団体には、アメリカの大麻合法化活動を 1970年代から牽引して来た活動団体 NORML(National Organization for the Reform of Marijuana Laws)が含まれています。
これは Amazon が社の方針として、大麻の合法化を公に肯定しているということを意味しています。NORML に問い合わせたところ、2014年以降に Amazon Smile を通して NORML が受け取った寄付金は $46,000 とのこと。このように、Amazon の売り上げの一部が大麻の合法化を支えていることはたしかなのです。
※ Amazon Smile から NORML への寄付額が間違っていました。読者の方にご指摘いただきましたので、このセクションを訂正しました(2019/9/4)。ご指摘ありがとうございました。
(3) 傘下のホールフーズも大麻を売る気は満々
2017年に Amazon が買収した、全米のオーガニック系スーパーマーケット「ホールフーズ」。こちらの CEO であるジョン・マッキー氏は以前より、各社メディアに対して、繰り返し「スーパーマーケットでもビールと同じように大麻を販売出来るようにするべきだ」と主張し続けています。
低迷するホールフーズを Amazon が買収したのは、自社の在庫を置いておく倉庫としても利用するためだと考えられています。仮にホールフーズでも大麻を販売できるようになれば、Amazon にとっては一石二鳥です。
(4) 海の向こうで戦争が始まる
Amazon には、Amazon が直接販売している商品と、それ以外の出品者が販売している商品があります。後者が取引されるのが「Amazonマーケットプレイス」です。このマーケットプレイスを利用すれば、理論上、大麻の生産者は Amazon を経由して消費者に直販することが可能になります。これは現状の大麻流通に革命的な変化をもたらす可能性があります。
そうなると困るのは、現在大麻を販売している小売業に従事する方々です。たとえばオークランドのスティーブ・デアンジェロ氏を筆頭に、合法化活動をリードしてきたアクティビストの多くはディスペンサリーを経営しています。完全合法化が起きれば、これら小規模な地場企業と世界企業の熾烈な闘いがアメリカでも展開される可能性が高いでしょう。
一足先に合法化したカナダでは、「プリンス・オブ・ポット」の異名を持つ歴戦の活動家、マーク・エメリー氏らの営むディスペンサリーが、当局により締め出されるなど、問題が顕在化しています。アメリカではどのような流れになるのか、動向に注目したいと思います。
文責:正高佑志(医師)
「通販書店」としてスタートしたAmazonは、
現在文字通り「全てを取り揃える通販店」と
なりました。
小売を押さえるだけでは飽き足らず、
デリバリーまで手掛けるとの一報を聞いた時、
「ジェフ・ベゾスは
地球をAmazonにしたいんだ…」
と思いましたw
その大いなるデザインからすれば
大麻を扱うなんてのは当然のことで、
単なる通過点なんでしょうね。