"それは医療大麻か? (1) ー小嶺麗奈さんと拒食症" はこちらから
小嶺麗奈さんの例に続いては、RIZE/Dragon Ash のベーシストである KenKen さん。「よく眠れたり、身体の不調が治ってリラックスできた。」と述べています。
https://www.oricon.co.jp/news/2147560/full/
これだけでは病名ははっきりしませんが、彼のツイッターを覗くと気になるツイートが見つかりました。
ほぼ毎朝、寝起きにストロング酎ハイの350 mlを4本というのは、尋常ではありません。朝からこれだと一日の酒量は相当なものでしょう。アルコール依存症かどうかを判断する4つの項目の一つに、「朝酒や迎え酒を飲みますか?」という質問があります。彼はアルコール依存症の診断基準を満たす可能性があります。
各種の依存症の治療に対して、大麻が薬として役に立つということについては、以前記事にしました。とはいえこのツイートを見る限り、本人にアルコール依存症の病識はなく、大麻をアルコール依存症の治療に使っていたわけではないと思います。しかし、仮に彼が嗜好目的の大麻常用者だとして、大麻を彼から取り上げた場合に、今以上に酒量が増える可能性はないでしょうか?
アルコールのもたらす健康被害は大麻のそれを大きく上回るというのが科学的な定説となっています。https://www.greenzonejapan.com/2019/10/22/yomiuri/
本人が意図したかどうかとは別に、彼にとって大麻はある種のハームリダクションとなっていた可能性が考えられます。実際に 32万人のアルコール依存症患者の記録を元にした最新の研究結果によると、大麻を併用していた患者では肝硬変に至る割合が 55%少なかったと報告されています。大麻と手を切った彼が、数年後にアルコール性肝硬変と診断されたとしても、今回の判決を下した司法関係者がそれを知ることはないでしょう。
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最後に RIZE のボーカル、JESSE さん。彼の場合、20年前から大麻の使用を開始したと述べ、目的は「(持病の)腰のヘルニアを楽にするため」と明言しています。カリフォルニア州では医療用大麻の患者認定を取得していることも明かしたそうです。
https://news.line.me/issue/oa-tvasahi-geinou/61b719b4d048
(参照元の記事は現在は削除されている模様です)
腰椎ヘルニアによる坐骨神経痛は医療大麻の適応の一つと考えられます。しかし、カリフォルニア州の患者認定が極めてルーズであり、誰でも希望すれば患者認定を受けることが出来るのも事実です。
日本国内でも可能なヘルニアの治療選択肢は、他にもあります。現在得られている情報だけからは、彼の大麻所持を医療目的として倫理的に正当化するのは難しい印象を受けます。
■ エンドカンナビノイド欠乏症の可能性?
3人とも社会的な地位があるにもかかわらず、長期間にわたって大麻を使用しています。リスクは充分にわかっていたはずです。彼等に共通するのは、大麻がフィットしたということなのではないでしょうか?
もしかすると、その背景には何らかの原因による、エンドカンナビノイドの相対的不足が関与しているのかもしれません。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15159679
「エンドカンナビノイド欠乏症」は現時点では仮設の域を出ず、疾患概念として広く認知されているとは言い難い状況です。とはいえ、病気が病気として認知されるのは、治療薬の開発後です。かつての「落ち着きのない子ども」が今日、ADHD という病気と診断されるように、今後、カンナビノイド医療の台頭に伴い、彼らにも診断名が与えられる日が来るかもしれません。
文責:正高佑志(熊本大学医学部医学科卒。神経内科医。日本臨床カンナビノイド学会理事。2017年より熊本大学脳神経内科に勤務する傍ら、Green Zone Japanを立ち上げ、代表理事を務める。医療大麻、CBDなどのカンナビノイド医療に関し学術発表、学会講演を行なっている。)
鋭い 切り口 病気と治療薬 の関係
から 切り崩すのは 算盤勘定の日本
医療業界に対して 魅力的 問題提起に
なり得ますね。