CBDを含むカンナビノイドには、様々なメリットがありますが、そのうちの一つに抗菌作用が知られています。2020年1月には英国のガーディアン紙が、薬剤耐性菌(MRSA)に対しカンナビノイドの一種であるカンナビゲロール(CBG)が有効である可能性を紹介し、注目を集めました。
https://www.theguardian.com/society/2020/jan/19/cannabis-compound-could-be-weapon-in-fight-against-superbugs
このカンナビノイドの抗菌作用に着目し、歯磨き粉として利用出来ないかという研究結果が報告されたため紹介したいと思います。
Cureus Journal of Medical Science の2020年1月号に掲載された「カンナビノイドと市販の歯磨き粉の抗菌作用比較:予備観察試験」と題された論文は、ベロニカ・スタールというベルギーの歯科医によって書かれています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/32038896
口腔内環境を清潔に保つことは、糖尿病などの全身疾患にも影響を与えることが近年知られていますが、重要なのはプラーク(歯垢)を溜めないことです。プラークは歯に付着した細菌が繁殖して出来たかたまりで、1 mg のプラークには1億個以上の細菌が生息しています。プラークを放置すると口臭や歯周病、歯肉出血、虫歯の原因となります。はみがき粉やマウスウォッシュを使用するのは、含有されるフッ素などの抗菌成分により、菌の増殖を抑えるためとされています。
本研究では18〜45歳の60名の患者さんからプラークを採取し、ペトリ皿で培養しました。参加者は、口腔衛生の程度(健康〜重度の歯周病)を分類する6段階のスケールで、それぞれのグループに属する10名ずつでした。
培地にはCBD、CBG、CBN、CBC、CBGA の5種類のカンナビノイド(12.5%)と、コルゲート、オーラルB、カナバイトF(ザクロと藻から取れた天然抗菌成分を含む歯磨き粉)の三種類の歯みがき粉を、それぞれ表面に吹き付けて培養を行いました。(37℃、24時間)
時間と共に細菌が増殖しコロニー数は増えていくのですが、抗菌作用によって増殖の速度が遅くなります。結果として、コロニー数が少ないほど抗菌作用が強いと考えることができます。
下のグラフが結果をまとめたものです。縦軸がコロニー数であり、数が少ない方が優れた抗菌作用を有しています。DPSI というのは口腔衛生のスケールで、0が健康で4が最も不衛生です。
前半の5つ(青、オレンジ、グレー、黄色、水色)がカンナビノイドの結果、後半の3つ(黄緑、紺、茶色)が市販の歯みがき粉の結果です。
ご覧の通り、どのような口腔衛生の患者層においても、カンナビノイドは市販の歯みがき粉と比較して、明らかな抗菌作用を発揮しました。特に DPSI4 の口腔内衛生に問題のある群では、差が顕著でした。
これらの結果から、大麻に含まれるカンナビノイドは歯科衛生ケアの領域でも活用されている可能性を秘めていると言えるでしょう。著者自身が述べるように、この研究は小規模の予備的なものです。今後、更なる研究の積み重ねが期待されます。
科学的知見に先行して、海外の市場では既にCBDを含む歯みがき粉が市販されているようです。歯周病に悩まれる方は一度試してみる価値はあるのかもしれません。
文責:正高佑志(熊本大学医学部医学科卒。神経内科医。日本臨床カンナビノイド学会理事。2017年より熊本大学脳神経内科に勤務する傍ら、Green Zone Japanを立ち上げ、代表理事を務める。医療大麻、CBDなどのカンナビノイド医療に関し学術発表、学会講演を行なっている。)
前略。
歯科医です。フッ素が菌の増殖を抑えるというのは少し違うかと…
歯の質を強くして、虫歯菌が酸を出すの抑えるのだと思います。
CBGもミュータント菌の増殖を抑制する。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33967995/