以前、自家製大麻オイルで自身の皮膚がんを治療したリック・シンプソン氏の物語を紹介しましたが、医療大麻はその他の皮膚の病気に対しても期待を集めています。
2019年には、CBD軟膏がアトピーや乾癬などの炎症性の皮膚疾患に対して効果がある可能性が報告されました。
http://www.clinicaterapeutica.it/2019/170/2/05_PALMIERI-VADALA.pdf
イタリアのモデナ・レッジョ・エミリア大学の研究チームは、20名の皮膚疾患患者(アトピー 5名、乾癬 5名、ニキビ痕 5名、色素沈着 5名)に対して、CBD軟膏を1日2回、90日間塗布し、治療前後の皮膚の状態を評価しました。(使用されたのはHemptouch 社の以下の製品でした。)
すると、CBDの投与後には瘢痕の改善、消失が確認されました。加えて皮膚の保湿性、弾力性とも著しい改善を認めました。
実際に、アメリカでは一部の皮膚科医は患者に医療大麻の使用を積極的に勧めているようです。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33220620/
2020年ジョージワシントン大学の研究チームが行ったアンケート調査には皮膚科医 145名が回答しましたが、その 91%が医療大麻に好意的でした。実際に患者に大麻使用を指示したことがあるのは 13.8%で、適応と考えた疾患は乾癬(40%)とアトピー性皮膚炎(45%)が主でした。
また2018年にはスタンフォード大学の研究チームが表皮水疱症についての CBDの有効性を報告しています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29786144/
この病気は、表皮と真皮を接着させるタンパクに生まれつき異常があるため、日常生活における軽微な外力によって皮膚や粘膜のただれ(びらん)や水ぶくれ(水疱)を生じる遺伝性の皮膚病です。研究チームは3例の患者に対し、CBDオイルを塗り薬として使用することで痛みが改善し、水疱いの治りも早くなったと報告しています。この結果から、火傷の水ぶくれなどに対しても、CBDは鎮痛と創傷治癒の促進効果がある可能性を示唆しています。
2020年にはトロント大学緩和ケア科の Vincent Mida のチームが「カルシフィラキシス」と呼ばれる原因不明の皮膚疾患に対する大麻軟膏の有効性についての論文を発表しました。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7540661/
この病気は強い痛みを伴う潰瘍を形成し、創部から感染が続発する傾向があり、診断から1年後の生存率は 55〜75% と言われています。その他の治療の効果が乏しく、大学病院に紹介されてきた二例(85歳と69歳の女性)に対し、Vincent らはCBD、THCにケルセチン、ジオスミン、ヘスペリジンなどのフラボノイドと βカリオフィレンというテルペンを配合した大麻軟膏を塗布し、治療効果を観察しました。
すると、どちらの症例でも痛みの改善が得られただけでなく、創部の治癒が認められたのです。この結果に対して著者らは、おそらく大麻成分による抗炎症作用が創傷治癒を促進したこと、そしてカンナビノイドとフラボノイド、テルペンによる相乗効果(アントラージュ効果)が重要であったことを考察しています。
このような重度の潰瘍性病変に対して効果があるのなら、高齢者の褥瘡(床ずれ)に対しても創傷治癒+鎮痛効果が得られる可能性が高いでしょう。
このように大麻軟膏やCBDには、アトピー性皮膚炎、乾癬、ニキビ、水ぶくれ、褥瘡などの幅広い疾患、症状に対して効果が期待されています。
文責:正高佑志(Green Zone Japan代表理事。医師。日本臨床カンナビノイド学会理事。)
大麻は素晴らしく、いろいろな分野で可能性を広げていくものだと思います。
現在、リウマチて医療を受けていますが、医療用大麻で治療ができればいいなあと思い、これからいろいろ調べてみます。
少しでも世間に知ってもらうお手伝いができればと思います。