高齢者に広がる大麻使用

2021.03.10 | 大麻・CBDの科学 | by greenzonejapan
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高齢者に広がる大麻使用
2021.03.10 | 大麻・CBDの科学 | by greenzonejapan

若者は煙をくゆらせ高齢者は眉をひそめるというのが、これまでの大麻のイメージでした。けれどCBD製品や医療大麻が認知されるにつれて、従来のステレオタイプとは違った大麻の使われ方が急速に広まりつつあります。

実際に近年の大麻に関する研究結果を眺めていると、高齢者医療の領域で医療大麻が役に立つという論文が数多く認められるのです。


https://agsjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/jgs.16833

カリフォルニア大学サンディエゴ校の老年医学の研究室が 2020年 10月に報告した調査では、クリニックに通院する 65歳以上の高齢者 568名を対象に大麻使用の実態に関する匿名のアンケート調査が行われました。

その結果、なんと回答者の 15%が過去3年以内に大麻を使用していたのです。さらに大麻使用者の 53%が常用者でした。一般的に合法地域でも大麻の喫煙率は 10%前後という報告が多いことを考えると、この 15%というのはなかなかに高い割合ですが、ここにはカラクリがあります。実は大麻といっても CBDが主要な成分である製品を使用する人が 46%だったのです。

THC製品の使用者を含め、78%が大麻を医療目的のみに使用していると回答しました。目的として多いのは、痛み・関節炎(73%)、不眠(29%)、不安(24%)、うつ(17%) などでした。使用方法についても従来の一般的な喫煙は 30%に留まり、塗り薬としての使用と、ティンクチャーとしての使用が 35%ずつでした。有効性に関しては、4分の3以上の患者さんが高い効果を実感し、ほとんど副作用も生じていないと回答しました。大麻製品を使用していることを家族が知っていると答えたのは 94%で、病院のスタッフに報告していると答えたのは 41%でした。大麻製品の使用を報告した患者さんの 61%が、還暦を過ぎて初めて大麻を手に取ったと答えました。これらの高齢者が、依存などの問題行動に陥りづらいことは過去の報告からも明らかと考えられています。

これらの新たな治療選択肢は、高齢者の生活の質を高めていると考えられる研究結果が報告されています。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32842935/

アイオワ大学の医療政策学教室の研究チームは、コロラド州とイリノイ州の医療大麻プログラムに参加する高齢者(60歳以上)139名を対象に、無記名のアンケート調査を行いました。すると週に1〜4日大麻を使用する人は、使用しない人より生活の質が高いことが明らかになりました。また週に5〜7日大麻を使用する人は、さらに高い満足度が認められました。大麻の使用頻度と副作用の出現には関係がありませんでした。

とはいえ、高齢者の脳に一度刷り込まれたネガティブなイメージを払拭するのは簡単ではありません。しかし少なくとも、医療使用に関しては意識の変化を示す研究結果が報告されています。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32684396/

コロラド州で大腿骨の人工骨頭置換術を受ける高齢者 555名に、手術前に医療大麻に関するアンケートを行ったところ、既に使用していると回答した患者が 20.2% 認められました。また全体の 75%は痛みに対して、お医者さんが大麻を処方するなら喜んで使用すると回答しました。全体の 77%が医療用大麻は合法化されるべきだと考えていましたが、嗜好品としての解禁に賛同するのは 39%に留まりました。

このように、医療大麻の合法化は、様々な痛みや症状に苦しむ高齢者に選択肢が一つ増えるということを意味しています。超高齢化社会が到来している日本でも、大麻を合法化することでより多くの恩恵を得られるのは高齢者なのかもしれません。

文責:正高佑志(Green Zone Japan 代表理事。医師。日本臨床カンナビノイド学会理事。)

 

 

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