近年の研究により、これまで考えられていたよりもたくさんの女性が更年期障害の様々な症状に悩んでいることが明らかになりつつあります。ホットフラッシュと呼ばれるほてりや寝汗、動悸などの血管運動神経系症状は 80%の女性が経験すると言われ、その他にも肩こり、疲れやすさ、頭痛、多汗不眠などの様々な症状は生活の質に大きな影響を与えます。
これらの更年期に伴う様々な症状への対処法として、医療大麻を使用する女性が増えていることが 2020年の北米更年期障害学会にて報告されました。
https://www.upi.com/Health_News/2020/09/28/Survey-1-in-4-women-use-cannabis-to-manage-menopause-symptoms/4271601298812/
UCSF の精神医学研究室助教授であるキャロライン・ギブソンらは、主に北カリフォルニア在住の 50代女性 232人に対してインタビューを行いました。回答者の 54%がほてりや寝汗を自覚し、27% が不眠を、69% が月経異常や尿失禁、性交痛などの泌尿・生殖器系症状に悩んでいました。
この調査では、回答者の 27%が更年期障害に対して医療大麻を使用している、もしくは使用した経験があると答えました。さらに10% が、今後医療大麻を試してみたいと回答しました。一方で従来の標準治療であるホルモン補充療法を受けていると回答したのは19% に留まりました。
(少なくとも北カリフォルニアでは)標準治療よりも医療大麻の方が既に主流となりつつある背景には、長期のホルモン補充療法に乳がんの発生率増加などのリスクが懸念されていることが関係しているでしょう。特に 2002年に、Woman’s Health Initiative Study (WHI) と呼ばれる 16,000人を8年間追跡する大規模調査で乳がん発生リスクが 26%上昇することが判明し試験が中止されたことは世界に大きな衝撃を与え、それ以降ホルモン補充療法は下火になりました。
https://womensmentalhealth.org/posts/reevaluating-the-pros-and-cons-of-hormone-replacement-therapy/
多くの女性が医療大麻という選択肢を選んでいるのは、一般的な処方箋治療薬と比較し、大麻の安全性が高いという認識が共有されていることの証左と言えるでしょう。
とはいえ更年期障害に対する医療大麻の有用性には、確固たる科学的根拠は確立されていません。今回の調査はこれらの症状に対する有効性の評価には踏み込んでいませんが、今後さらなる調査の結果、医療大麻が更年期障害の助けになるかどうか、明らかになる日は遠くないように思われます。
文責:正高佑志(Green Zone Japan 代表理事。医師。日本臨床カンナビノイド学会理事。)
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