Vape 製品を使う人が知っておくべきこと

2021.03.23 | 大麻・CBDの科学 安全性 | by greenzonejapan
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Vape 製品を使う人が知っておくべきこと
2021.03.23 | 大麻・CBDの科学 安全性 | by greenzonejapan

2019年から 2020年にかけて、米国ではベイプ関連肺炎によって少なくとも 68名が亡くなりました。
https://www.greenzonejapan.com/2019/10/17/vape/

この「犯人」は、違法市場で流通されていたベイプ製品に含まれていたビタミンEアセテートと考えられています。ビタミンEはナッツ類や緑黄色野菜に多く含まれており、サプリメントとしても流通しています。このように馴染みのある成分が、思いがけない健康被害を引き起こした理由は、気化吸入という投与経路にあります。

食品として安全性が確立された成分であっても、肺から吸入する場合に同じく安全であるかどうかは保証がありません。

日本国内では THC のべイピングは違法ですが、同じ形状の CBD リキッドは合法的に流通しています。我々が知る限り、現時点では国内で CBDベイプが原因となった深刻な健康被害は報告されていません。しかしさまざまな企業が参入する今日の市場では、品質に疑問の残る製品も流通しているのが現状です。
https://www.greenzonejapan.com/2021/01/11/cbdmax/

ベイプ製品を購入・使用するときに、どのようなことに気をつければいいのか考えてみましょう。

1. CBD以外の溶媒・添加物に注意しましょう

一般的なVapeのリキッドは、① 有効成分(CBD・THCなど)、② 溶媒(キャリア・オイル)、③ 添加物(香料・テルペンなど)で構成されています。

CBD や THC などの有効成分に関しては、人類が長く大麻を喫煙してきた経験から、気化吸入しても安全で問題がないと考えることができます。一方で、これらの成分を希釈するために使用される溶媒(キャリア・オイル)を人類が吸入し始めたのは、主には 21世紀になってからのことです。先述のビタミンEアセテートも、溶媒として添加されていました。

現在、市場で流通する製品にキャリアとして広く使用されているのは MCT、PG(プロピレングリコール)、PEG(ポリエチレングリコール)、VG(植物性グリセリン)ですが、コロラド州などの一部地域ではビタミンEアセテートに加え、MCT オイル、PEG の添加は禁止されています。PG は一般的に規制されていませんが、加熱によりホルムアルデヒドなどの発癌性物質を発生させる可能性が指摘されています。(特に5V以上での加熱で発生量が増えるようです。)
https://www.projectcbd.org/ja/industry/how-safe-your-vape-pen

これらの認識が広まるにつれて、一部のベイプ企業はテルペン由来の希釈剤を使用することで、一般的な溶媒を使用しないことを選択しています。加えてベイプ製品に風味付けとして使用される香料の多くもまた、食品としての安全性審査は経ていても、肺から吸入することは想定されていません。

香りを強めるために、さまざまなテルペンを付加することが一般的になっていますが、その場合に大麻以外から採取されたテルペンが使われることも多いようです。非大麻由来のテルペンの中には分子量が大きく、加熱により化学構造が変化し、人体にとって毒性が生じる可能性が指摘されているものがあります。実際にコロラド州では非植物由来のテルペンをベイプ製品に添加することは禁止されています。

これらの理由から、なるべく大麻由来の成分だけで作られており、余分な添加物を含まない製品が安全性の上では望ましいと思われます。

2. 企業はエミッション・テストの施行を

ベイプ製品に関して重要な点は、摂取するのが液体のリキッドでなく、リキッドを加熱気化させて発生するエアロゾルであるということです。THCA が加熱により THC に変化するように、ベイプに含有されるその他の成分・添加物も加熱によって変性する可能性があります。またデバイスに使用されている金属が気化する可能性も指摘されています。
https://www.mdpi.com/1660-4601/12/5/5215/htm

そのため理想的には気化した成分の安全性の検査が行われるべきで、これは「エミッション・テスト」と呼ばれています。実際に EU やカナダで流通するニコチンのベイプ製品には義務付けられており、CBD ベイプ製品もこれらの検査をパスしていることが望ましいでしょう。(残念ながら、2021年3月時点で日本で流通している CBD ベイプ製品でエミッション・テストが行われているという情報は得ることができませんでした。)

欧州やカナダ、アメリカの各州では、それぞれにベイプに関する規制を整備しつつあります。一方で日本ではベイプは雑貨扱いであり、一切の規制が存在しません。

私は決してベイプ規制論者ではありませんが、品質管理を 100%、企業の良心に委ねている現状には不安を覚えます。大きな事故が起こる前に、基本的な法整備を行うべきではないでしょうか?

参考:https://www.leafly.com/news/health/thc-vape-rules-review-finds-loopholes

文責:正高佑志(Green Zone Japan 代表理事。医師。日本臨床カンナビノイド学会理事。)

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