脳腫瘍とCBD、CBG、医療大麻

2021.08.06 | 大麻・CBDの科学 病気・症状別 | by greenzonejapan
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脳腫瘍とCBD、CBG、医療大麻
2021.08.06 | 大麻・CBDの科学 病気・症状別 | by greenzonejapan

医療大麻が合法な地域ではがん治療に大麻を併用することが急速に普及しつつあり、脳腫瘍でも例外ではありません。

2018年の時点でフロリダ州では、脳腫瘍と診断された患者の1/3が診断後になんらかの大麻製品をがんの補助療法として使用し、そのうちの83%がポジティブな効果を実感しています。1

脳腫瘍の中には、組織毎に更に細かい分類が存在しますが、中でも最も予後が悪いとされるのが膠芽腫(グリオブラストーマ)です。グリオブラストーマには手術や放射線治療、抗がん剤治療などを併せた治療が施されますが、現代の医療水準をもってしても診断から5年後の生存率は10%程度とされています。2

この悪性度の高さと治療手段の乏しさ故に、グリオブラストーマは医療大麻治療の研究対象として注目を集めています。

2019年に”Anticancer Research”という学術誌に、興味深い報告が掲載されました。執筆はオーストリアのクラーゲンフルト病院の研究チームです。3

この病院では、脳腫瘍の患者連続9症例に対して、外科的手術と放射線治療に加えて、CBD400 mg/dayを併用したところ、論文提出時点で9名中8名が存命であり、診断からの平均生存期間は22.3ヶ月となっているとのことです。グリオブラストーマの平均生存期間が14~16ヶ月であることを考えるとこれは優れた数字です。

標準医療内での活用を目指した治験も開始されています。2021年にセント・ジェームス大学病院とGW製薬が共同で行った、サティベックスによる第一相&二相試験の結果が報告されました。4

第二相試験では、実薬群=12名、プラセボ群=9名に対して投薬が行われ、実薬群では最大でTHC:32.4 mg+CBD:30 mg /dayが投与されました。結果的に1年後の生存率はサティベックスを使用した群では83%、プラセボ群では44%でした。症例数は少ないですが効果が期待できる数字です。この結果を受け第三相試験が実施されることが見込まれます。

効果が期待されているのはTHCやCBDだけではありません。2021年2月にはグリオブラストーマとCBGについての基礎研究結果が公表されています。5

こちらの論文ではCBDとCBGを併用することで、がん細胞の浸潤を抑制し、選択的に細胞死(アポトーシス)を誘導することができる可能性が指摘されています。実臨床に関して長い経験を有するシアトルのAims Instituteも、がん患者に対してCBD+CBGを標準治療に加えて摂取するレジメンを推奨しています。6

これらいずれの報告も標準治療との併用を前提としたものですが、カンナビノイドを併用することにより得られるメリットは大きく、デメリットは小さいことが示唆されています。またTHCを含まないレジメンは現在の日本の法律下でもアクセスが可能です。その他に治療手段の乏しい患者さんにとって、カンナビノイドが救いとなることを願っています。

参考文献:

1: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31081711/

2: https://www.ncc.go.jp/jp/rcc/about/brain_tumors/index.html

3: https://ar.iiarjournals.org/content/39/10/5797

4: https://www.nature.com/articles/s41416-021-01259-3

5: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33562819/

6: https://www.greenzonejapan.com/2021/05/10/aims-institute/

文責:正高佑志 Green  Zone Japan代表理事。医師。著書に「お医者さんがする大麻とCBDの話(彩図社)」

 

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