バッドトリップとは
精神作用のある物質によって引き起こされる不快体験は、俗にバッドトリップと呼ばれています。バッドトリップにもある種の学びがあり、必ずしも悪いものとは思いませんが、予防方法や対処法についての知識を持っておくことは精神作用を有するカンナビノイド製品を使用する際には重要です。
大麻によって引き起こされる一過性の不快体験は、大麻使用経験者のおよそ40%が体験しています。具体的には不安、嘔吐、妄想、無気力、抑うつなどが挙げられます。大麻によって誘発されるこれらの症状はいずれも一過性のものであり、数時間で自然と消失します。
セットとセッティングについて
これらのバッドトリップを予防する上で重要なのは、セット・セッティングと呼ばれる概念です。
セットとは精神状態や心構えなど内的な環境を指します。たとえば大麻に対して“逮捕されるのではないか“という不安や、“一度でも使用すると依存になる“という認識があると、精神作用はマイナスの方向に働きやすくなります。また、悲しい出来事があった直後に使用すると、それらの感情が増幅される可能性が高いでしょう。これがセットの影響です。
セッティングとは、身体的な体調や使用状況を含めた外的な環境を指す言葉です。風邪や二日酔いで具合が悪い際に精神作用のある物質を使用すれば、ネガティブな作用が生じやすいことは理解できるでしょう。場所や一緒にいる人などの環境も重要で、不特定多数が出入りする場所や、面識のない人のいる状況では、被害妄想が生じやすくなります。
セットについては薬物についての知識を深めること、心のコンディションが良くない際の使用を避けることが大切です。セッティングについては、場所・人・時期を選びましょう。これらの心理状態や環境を適切に整えることで、バッドトリップに陥る確率を著しく低下させることが可能です。仮に誘われても、自身のセットやセッティングが整わない際にはキッパリと断ることをお勧めします。
バッドトリップの対処法
不運にして、妄想や不安に囚われてしまった際にはどのように対処すればいいでしょうか?まず最も重要なことは、大麻の過剰摂取によって死ぬことは決してないこと、そしてこれらの不快な症状は数時間で消え去ることを知っていることです。それによってパニックを防ぐことができます。
不安や妄想から抜け出すためには、注意を別の何かに集中させることが有効です。よく推奨されるのは自分の好きな音楽を聴くことや、チョコレートやジュースなどの甘いものを準備しておき、口にすることです。優しさは一番の特効薬です。もし誰かが隣にいるなら素直に具合が悪くなっていることを伝え、手を握ってもらいましょう。
また手元にレスキュー用にCBD Vapeを持っておくのは有用な手段です。CBDにはTHCの精神作用を中和する力がありますので、ちょっと行き過ぎたなという際に使用することでバランスを取ることが可能です。(備えあれば憂いなし。このようなの準備をしておくことも、セッティングを整えることの一部です。)
逆に、お勧めしないのはパニックになって屋外へ出ること、叫ぶなどの奇異な行為を取ることです。これらは他人の注目を集め、被害妄想を悪化させます。
これまで日本の薬物教育では、薬物を使用させないことに重点を置くあまり、安全に使用する方法について語ることはタブーとされてきました。しかし、実際には若者の大麻使用率は増加の一途を辿っているようです。安全に使用するための啓発活動はハームリダクションの一部であり、厚労省などの公的機関にも率先して行って頂きたいと考えています。
執筆:正高佑志(Green Zone Japan代表理事 医師)
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