昨今のCBD人気の高まりに伴い、矢野経済研究所の試算では2021年の国内市場は180億円を突破したと考えられています。
これだけの規模で製品が売れているにもかかわらず、ユーザーがどのような用途で使用しているかについて調査が行われたことはありませんでした。そこで我々は、2021年8月に国内のCBDユーザーを対象とした無記名のオンライン調査を実施しました。その結果がこの度、査読学術誌である日本統合医療学会誌2022年11月号に掲載されましたので、内容について概略を解説したいと思います。
市販のCBD製品の用途や安全性、有効性については市場が先行するカリフォルニアや英国から報告が上がっています。(詳細については過去の解説記事をご覧ください。)しかしこれらの地域における所見を、そのまま日本国内に当てはめることはできないと我々は考えています。(なぜなら米国では0.3%、イギリスでは0.2%までのTHCは許容されており、これらの少量 THCが含有されることで大麻製品の薬効は上昇すると考えられているからです。)日本国内の厳格なTHC基準に沿った製品にどれくらいの有効性が認められるのかについては独自の調査が必要と考え、我々は匿名のオンライン・アンケートフォームを作成し、ブログ・youtube・TwitterなどのSNSにて回答を呼びかけました。
回答者のうち、日本国内に居住する者でCBD製品を1回以上使用した経験がある者を解析対象とし、過去1年以内にTHCを含有する大麻製品を使用した経験があるものは除外対象としました。
・回答者背景
その結果、799名が解析対象に該当しました。回答者の性別は男性が60.6%で、平均年齢は37.7歳でした。学歴に関しては中卒が5.6%、高卒が29.3%、大学卒が33.8%でした。何らかの処方箋医薬品を使用している者が30.5%で、CBD以外のサプリメントを併用している者が57.4%でした。医学的診断として多く挙げられた(10%以上)のは、精神疾患112名(40.6%)、睡眠障害53名(19.2%)、慢性痛45名(16.3%)、喘息37名(13.4%)、皮膚疾患36名(13.0%)、高血圧35名(12.7%)、頭痛30名(10.9%)でした。
・CBD使用についての詳細
回答者の89.5%が回答時点でもCBDの使用を継続していると答えました。使用経験のある製品の形状については多い順に、電子タバコ(62.5%)、オイル(59.6%)、塗布薬(34.3%)、食品・飲料(34.0%)でした。 1ヶ月あたりでCBD製品に対して使用する金額については、5000円未満の層が最多で35.9%を占め、続いて5000~10,000円の層が34.9%でした。 1日あたりのCBD使用量については最も多かったのは0-24mg/dayと報告した層であり(39.1%)、次いで25-49 mg/dayの層が28.6%を占めました。200mg/day以上と回答した層も5.0%認められました。
・CBD使用の用途について
多く認められたのは順にリラクゼーション(77.8%)、睡眠改善(66.3%)、不安(56.2%)、健康増進(50.8%)、抑うつ(47.8%)、頭痛(42.2%)、嗜好目的(35.9%)、関節痛(32.3%)、美容目的(24.7%)、炎症性皮膚疾患(24.2%)でした。
5.使用前後の自覚症状の改善度について
主要な用途のうち、非進行性の病態でかつ自覚的な評価に意義があると考えられた12項目について、CBD使用開始前後の重症度の自己評価をNRSを用いて11段階(0~10、数字が大きいほど重症度が高い)で自己評価するよう指示し、平均スコアに有意差があるか統計学的評価を行いました。すると12項目全てでCBDの使用後に症状緩和を自覚していたことが明らかになりました。
7.副作用について
回答者の59名(7.4%)がCBD使用に関連した副作用を疑う症状を報告しました。内訳は眠気・倦怠感が39名(4.9%)、消化器症状が24名(3.0%)、口渇が22名(2.8%)、食欲増進が16名(2.0%)、その他が13名(1.6%)陶酔感が10名(1.3%)、動悸が8名(1.0%)、不眠が7名(0.9%)、赤目が7名(0.9%)食欲低下6名(0.8%)、頭痛5名(0.6%)、皮膚症状2名(0.3%)であった。そのうち病院への受診を要するものは4例のみでした。
この結果は日本国内で食品・サプリメント・雑貨として利用されている製品も使用者の生活の質改善に貢献していることを示す初の検証結果であり、今後てんかん以外の症状に対しても、医療用途での適応拡大を検討する意義があることを示すものと考えられます。
執筆:正高佑志(医師・Green Zone Japan代表理事)
コメントを残す