大麻やCBDとスポーツの関係性については、これまでにも記事を執筆してきました。
アメリカでは主に、アメリカンフットボールや総合格闘技などのコンタクトスポーツを中心に、痛みの治療やリカバリー促進目的に大麻、CBDが活用されています。これはアメリカに限った話ではありません。イギリスにおいては、ラグビー選手が同じようにCBDを頻繁に利用しており、その実態について学術的調査が行われています。
この研究はリバプール・ジョン・ムーア大学の研究者らによって執筆されています。イギリスには15人制ラグビー(ラグビーユニオン)と13人制ラグビー(ラグビーリーグ)の二種類のプロラグビーが存在しますが、今回の調査では両者合わせて25チーム、合計517名のプロ選手から回答を得ました。調査は2019-2020シーズンに実施されました。
○CBDの認知度
アンケート回答者のうち91%がCBDを認知していると答えました。認知のきっかけはインターネットが73%と最も多く、次いでチームメイトからの口コミ(61%)、他チームの選手からの口コミ(41%)、栄養士からの紹介(16%)という順でした。
○CBDの使用経験
回答者のうち26%がCBD製品の使用経験があり、8%が回答時点でもCBDを継続して使用していると答えました。CBDの使用経験にはサンプリングしたチーム毎に有意な差が認められました。またCBD使用と年齢には有意な相関関係が認められ、18-23歳の選手では使用経験が明らかに少なく、28歳以上の選手では経験者が多い傾向が認められました。
○CBD使用・不使用の理由
CBDを使用した理由については、痛み・リカバリーの促進(80%)、睡眠の改善(78%)、不安の改善(32%)、その他の医療目的(14% 脳しんとう、長期の怪我、化学療法)などが主なものでした。
またCBDを使用しない理由として挙げられたのはドーピング規則違反への懸念(64%)、メリットが不明確(37%)、必要性を感じない(29%)、クラブチームから使用しないように勧告された(23%)などでした。
○実際の使用について
使用されたCBDブランドは13社に渡り、全てがオイルもしくはカプセルでした。使用量は多岐に渡り39%はよくわからないと回答しました。実際の効能としては使用経験者の67%が何らかの効果を体感していました。(睡眠41%、リカバリー促進14%、気分改善6%、不安改善3%)副作用については報告されませんでした。
ラグビーはその競技の性格上外傷と密接な関係性があり、リカバリーの促進は重要な要素の一つとなっています。そのことがCBDについての高い関心につながっていると考えられます。これはラグビーに限った話ではなく、先行研究ではアスリートの鎮痛剤使用量は一般の4倍という結果が報告されています。日本では相撲などが、似たような環境にある競技と言えるかもしれません。かつて角界の大麻汚染が話題になった時期がありましたが、大麻やCBDのリカバリー促進剤としての側面を考慮すると、一連の出来事が“薬物乱用“であったのかどうかは再検討の余地があるように思われます。
執筆:正高佑志(医師・Green Zone Japan代表理事)
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