大麻の睡眠への影響:科学的エビデンスと現行の研究

2023.06.17 | 病気・症状別 | by greenzonejapan
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大麻の睡眠への影響:科学的エビデンスと現行の研究
2023.06.17 | 病気・症状別 | by greenzonejapan

“大麻を吸うとぐっすり眠れる”というのは、多くのユーザーが共通して述べる感想であり、大麻使用者の間では半ば常識とも言える信念です。しかし、大麻が睡眠にどのような影響を及ぼすのかについては科学的な研究がまだ不十分な状態です。2021年1月までに公開された大麻と不眠症に関連するランダム化比較試験は39件存在しますが、そのうち33件はがん患者を対象とした研究です。
現在のところ、睡眠への影響は、他の重病を対象とした医療大麻の使用に関するデータ収集の過程で、一部のアウトカムとして評価されています。しかし、一般的な不眠症の患者を対象とした大麻の効果を評価する研究はほとんど行われていません。2023年2月に、”Drug and Dependence”という学術誌に掲載された新しい研究が、日常的な大麻使用が睡眠にどのような影響を及ぼすのかを評価しています。

この研究は、マサチューセッツ総合病院およびハーバード医学大学の中毒医学センターに所属する研究チームによって行われました。この研究では参加者は90日間の期間中、ウェブベースの自己報告式のアプリを使用し、大麻使用と睡眠、気分、疼痛の症状を毎日報告しました。対象者ボストン近郊に在住の186名で、基本的には健康ですが、何らかの症状に対して医療大麻カードの取得を検討をしている成人であり、参加時に痛み(Brief Pain Inventory) 、不眠(Athens Insomnia Scale)、不安/うつ(Hospital Anxiety and Depression Scale)の症状について自己申告しました。
(この研究では、79名に医療大麻カードの発行を90日間待ってもらい、その間に大麻患者と同様のスコアリングを実施してもらうグループをコントロール群として設定することで、プラセボ効果を除外しています。)

90日間の治療期間中、参加者は専用に開発されたアプリを利用し、毎日1回の記録が義務付けられました。まず、今日は大麻を使用したかどうか、使用した場合は使用回数を記録し、その後に、スライダーを使って症状を10段階で数値化して報告しました。

(今日は平均してどのくらい痛みを感じたか→1:痛みなし10:激痛
昨晩の睡眠の質はどうか→1:非常に悪い, 10:非常に良い
今日はどの程度気分が落ち込んだか?→1:問題ない,10:非常に落ち込んだ)

その結果、大麻を吸った日は、吸っていない日と比べて有意に睡眠の質が高いことが明らかになりました。(痛みの程度には差がなく、うつの程度は軽度ですが吸った日の方が軽度でした)この改善度合いについて、筆者らは臨床的な意義のある変化だと論じています。
また90日の期間中に、大麻を使用した人たちの睡眠の質はだんだんと改善したことが示されました。これは日々の大麻使用継続が睡眠の質を上昇させる可能性を示すものです。

大麻は処方箋医薬品ではないため、経済的な理由から大規模なランダム化比較試験が今後も行われる可能性は低いと考えられます。しかし本研究のようなアプリを利用したユーザーの追跡調査は今後増えると予想されます。日本国内においても、CBDなどのカンナビノイド製品について同様の調査を行うことが重要だと考えています。

執筆:正高佑志(Green Zone Japan代表理事・医師)

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