これまでの研究により、大麻草は糖尿病の予防、血糖コントロールの改善、合併症の緩和など、様々な観点から糖尿病患者の健康維持に貢献し得ることが示されています。
一方でCBDについては2016年に報告された最初のパイロット試験では、200mg/dayの投与は血糖コントロールの改善には寄与しませんでした。
しかしこの後の研究では、少しづつ良い結果も報告されつつあります。
2021年には糖尿病の専門誌にて、Pure Green 製薬という企業に所属する研究者が、糖尿病性ニューロパチーによる足の痛みにCBDは有効であったと報告しました。
この研究では55名の糖尿病性ニューロパチー患者をランダムに2グループに分け、一方には水溶性CBD舌下タブレット3錠(60 mg/day)を、他方には偽薬を投与し28日間経過を観察したところ、実薬群ではプラセボと比較し有意に痛みのスコア改善を得ました。
また2021年5月にはテキサス州・インカーネイトワード大学から興味深い症例報告が発表されています。
症例は62歳のヒスパニック系肥満男性(体重113kg、BMI 39kg/m2)であり、11年来の2型糖尿病の既往を認めました。
定期通院の際に、糖尿病コントロールの指標であるHba1c7.6%であったため、サキサグリプチン(オングリザ)5mgを追加処方されました。その直後に低血糖発作を認めたため、患者の自己判断にて、持続型インスリン32単位をCBD20mgへと置き換えたそうです。(その後にCBDは18mgを2回=36mg/dayへと増量されました)
インスリンの中断によって、血糖コントロールは劇的に悪化すると思われましたが、予想に反して半年後のHba1c:7.7%とほとんど変化がありませんでした。この結果について、主治医らはサキサグリプチンだけでインスリンの代替が可能であったというのは解釈が難しく、CBDが血糖コントロールに貢献していると考えているようです。
さらに2022年12月にはイランの研究チームがCBD:THC=10:1の舌下スプレー製品(CBDEX®︎)を二型糖尿病患者25名に2ヶ月間投与しプラセボと比較する試験結果を報告しました。すると1日4puff(1puffあたりCBD100μg、THC10μg)の投与は、中性脂肪や悪玉コレステロールの値を改善し、またHba1cも-8.5%の改善が得られました。
筆者の周辺でも、不眠に対してCBDを使用開始したところ血糖コントロールが予想外に安定し、主治医が驚いているという体験談が寄せられています。
例えば痛みや不眠、不安、抑うつなどの症状と二型糖尿病が合併している例では、一石二鳥の選択肢としてCBDの導入の優先度を上げて考えてもいいかもしれません。
執筆:正高佑志(一般社団法人Green Zone Japan)
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