統合失調症の発症をCBDが予防する?

2023.08.16 | 大麻・CBDの科学 病気・症状別 | by greenzonejapan
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統合失調症の発症をCBDが予防する?
2023.08.16 | 大麻・CBDの科学 病気・症状別 | by greenzonejapan

てんかんに次いで、CBDの研究が進んでいる疾患はおそらく統合失調症です。大麻(THC)に関しては、統合失調症の発症トリガーになる可能性が危惧されているため、家族歴などのリスクがある方は使用しない方がよいと考えられていますが、CBDに関しては治療的に作用すると考えられています。

実際にこれまでの人を対象とした第二相試験で、CBDは従来の抗精神病薬と比較し同等の有効性を示すこと、肥満や性欲低下などの副作用は相対的に少ないことが示されてます。2023年の後半には、オックスフォード大学が束ねる統合失調症へのCBD有効性の国際研究がチャリティーから27億円の寄付を受け大規模試験を開始すると報道されています。治験薬はJAZZ製薬がEpidiolexを提供する予定です。

これらは既に統合失調症を発症した患者の治療として、CBDが役立つかもしれないという話ですが、さらに一歩踏み込んで統合失調症の発症をCBDが予防してくれるかもしれないという研究結果が近年報告されています。

本領域では2018年にはブラジルの研究チームが動物実験モデルを使い、CBDが統合失調症を予防する可能性を指摘しています。

そして2023年3月、ドイツとオーストラリアの研究者らが“精神病発症危機状態(Clinically high-risk mental state)“にある19歳の症例に対してCBDが著効したことを報告しました。
この白人男子学生は過去6ヶ月の間に明らかな認知機能低下、快感の消失、引きこもり、発話の低下と一過性の妄想や幻覚を主訴に、ドイツ・ケルンの早期認知介入センターに受診しました。精密検査の結果、“精神病発症危機状態(ARMS)“と呼ばれる、統合失調症の発症が危惧される状態であると考えられました。
患者はケルン大学の精神科からCBD600mg/dayを30日間投与されました。それ以外の治療薬や精神療法は追加されませんでした。治療一ヶ月後に行われた評価では、統合失調症の重症度スコア3種類はいずれも、有意な改善を認めました。(PANSS:70点→51点、SPI-A:71点→30点、SIPS:35点→18点)
またPETスキャンと呼ばれる検査では、CBD投与の前後で脳全体の糖代謝が増加していることが示されました。この解釈は難しいのですが、未治療の統合失調症患者では脳の一部での糖代謝が亢進し、治療に伴い糖代謝が低下することが知られており、これは何かしらの機能障害を代償している可能性が考えられています。CBD投与による全体的な糖代謝の更新はバランスが“整った“可能性を示唆しています。

統合失調症の病前状態から発症へのプロセスをCBDが予防してくれるとすれば、これはメンタルヘルスのサプリメントとして、大きな可能性を示していると言えるでしょう。

 

執筆:正高佑志(医師・ Green Zone Japan代表理事)



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