厚生労働省の平成29年の患者調査によると、高血圧で病院に通っている患者さんの数は国内で 1,000万人弱、日本高血圧学会によれば、未治療患者を含めると4,300万人の方が高血圧であるとされています。これは日本の全人口の約 3分の 1 にあたります。
血圧とは、心臓というポンプが血液を身体の隅々に送るときに、血管というパイプにかかっている圧力のことです。日本では収縮期(上)140 mmHg、拡張期(下)90 mmHg以上が高血圧とされています。血圧が高いこと自体は基本的には症状を引き起こしませんが、高血圧状態を長期間放置すると血管が劣化し、脳梗塞や心筋梗塞などの「血管病」を発症するリスクが高くなることが知られています。そのため、高血圧の患者さんは病院や健康診断で減塩や運動、降圧薬の内服などにより降圧治療が勧められます。
大麻が血圧に与える影響については、昇圧効果・降圧効果の両方を示す結果が報告されていますが、UKでの大規模疫学データ解析などを参照すると、大麻の血圧への影響は軽微と考えられます。(仮に著しい影響があるなら、既に影響を示す学術報告が認められるはずです。)
一方でCBDの影響に関しては、研究が始まったばかりです。
2023年4月にクロアチア・スプリト医科大学の研究チームがRCTの結果を報告しています。こちらの研究で使用されたのは、Lexariaバイオサイエンス社(NASDAQ上場)が開発中のDehydraTECHという独自の特許取得技術を使用した高吸収型CBD製剤です。このCBDを高血圧患者70名に対して、5週間にわたって投与(前半は225-300mg、後半は375-450mg)し、プラセボ群とクロスオーバー、実薬とプラセボを投与している際の血圧の違いを評価したところ、CBD投与群では収縮期血圧で4.76mmHg程度の低下が確認されました。
これは大きな違いには思えませんが、減塩の場合は1g/dayで1mmHgの降圧効果と言われていますので、4.7gの減塩に等しい効果と言えるかもしれません。(日本人の平均的な塩分摂取量は10g/dayで、高血圧の場合は6g/day以下が推奨されています。普通食を減塩食に替えるより、CBDを服用する方が降圧作用が高い可能性はあるのです。)
また同研究チームは2023年8月には、未治療の高血圧患者16名に対して、CBD450mg/dayを投与し血圧への影響を評価するランダム化クロスオーバー比較試験を実施し、こちらでも統計学的に有意な血圧低下が認められました。
これらの治験から、CBDには降圧作用がある一方で、病院で処方されるカルシウム拮抗薬などと比較すると、降圧効果は軽度であることが予想されます。
忘れてならないのは、血圧のコントロールは手段であって目的ではないことです。真の目的は脳梗塞や脳出血、心筋梗塞といった血管系のトラブルを未然に予防することであり、高血圧は数々のリスク因子の一つに過ぎません。
CBDには降圧作用以外にも、血糖コントロール作用や安眠作用が期待されています。これらもまた血管トラブルのリスク因子です。特に様々な疾患を合併する高齢者などにおいては、CBDは多方面から働きかけることで標準治療薬にはないメリットをもたらすかもしれません。
執筆:正高佑志(医師・Green Zone Japan代表理事)
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