PCAT患者調査2023年版 簡易結果報告

2023.12.15 | 国内動向 大麻・CBDの科学 | by greenzonejapan
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PCAT患者調査2023年版 簡易結果報告
2023.12.15 | 国内動向 大麻・CBDの科学 | by greenzonejapan

背景:カンナビノイド医療患者会(PCAT)はその前身である“みどりのわ“が発足した2018年から、難病患者を対象にCBD製品の非営利価格での提供を続けてきました。2021年11月に正式に会が発足してから、2023年9月末時点までにおよそ300名の問い合わせがあり、227名の正会員申込を承認しています。

これらのユーザーのCBD製品使用実態と安全性・有効性については、てんかんユーザーを対象に2021年6月に横断調査を実施し、国際誌(Neurology Asia)に掲載されました。しかし、PCATが正式に発足し、てんかん以外の患者へと適応を拡大して以降の使用実態調査は行われていませんでした。

そこで今回、2023年7月15日から8月31日に、調査開始時点までに入会した正会員202名を対象に、CBD使用実態についてのオンラインアンケート調査を実施しました。

【使用背景】
期間中に115件の回答を頂き、解答率は57%でした。(メールが届かなかった方や、既に亡くなられた方を母集団に含みます)患者さんの性別は女性が51%で、年齢は1歳から80歳に分布し、平均は31歳でした。回答者の80%が製品の使用を継続していました。

使用している製品はCBDブロードスペクトラムが49%、CBDアイソレートが46%、CBGが24%、CBNが16%でした。一日あたりのCBD使用量の中央値は、アイソレート・ブロードスペクトラム共に100-150mgでした。CBG、CBNの使用量中央値はいずれも50-100mgでした。使用頻度は1日2回が全体の59%を占めました。一ヶ月あたりカンナビノイド製品の購入に使用する金額の中央値は10,000円でした。

製品の用途は多い順に、てんかん(38%)、メンタルヘルス(18%)、何らかの痛み(13%)がん(7%)でした。その他の用途には、クローン病、関節リウマチ、偏頭痛、パーキンソン病、自閉症・ADHD、嚢胞腎、アルコール依存症、筋ジストロフィー、サルコイドーシスなどが挙げられました。

【有効性について】
“カンナビノイド製品を使用し始めてから患者さん本人の生活の質(QOL)はどのように変化しましたか?“という質問には20%が“劇的に改善した“、49%が“どちらかというと改善した“と回答しました。家族・介助者のQOLについては、11%が“劇的に改善した“、31%が“どちらかというと改善した“と回答しました。

病院から処方される薬の量や種類については、30%のユーザーが減薬を報告しました。
てんかん患者では、22%のユーザーが発作の劇的な減少を報告しました。

がん患者では、痛み、不眠、うつ、吐き気などの症状緩和に関してはユーザーの大半が効果を実感した反面、腫瘍の進行抑制効果を実感したのは1名/8名に留まりました。

メンタルヘルス領域では、睡眠に関しては75%が、不安に関しては60%が、うつに関しては45%が改善を自覚していました。

痛みに関しては、カンナビノイド製品の使用開始前の痛みが平均で8.3/10点であったのに対して、使用開始後には5.6/10点まで改善が認められました。

【安全性について】
カンナビノイド製品の使用に伴い、副作用を疑うような症状は認められましたか?という質問に対して、21%が経験があると回答しました。症状の内訳は、多い順に“眠気・倦怠感“、“口渇“、“嘔吐・下痢などの消化器症状“、“食欲低下“、“食欲増進“の順でした。

重症度に関しては、56%が製品の減量や中止を必要とせず、36%は減量や中止で速やかな改善が得られました。病院への受診を必要としたのは8%で、入院加療を要する例はありませんでした。ユーザー全体では、病院への受診を必要とした割合は2%ということになりました。

またユーザーのうち、カンナビノイド製品の使用について担当医に情報提供を行っていたのは64%でした。

【まとめ】
日本国内で難病を対象にカンナビノイド製品を使用した経験のある115名(PCAT正会員)から回答を得たところ、継続率は80%で用途は多い順にてんかん、メンタルヘルス、疼痛でした。CBD使用量の中央値は100-150mg/day、副作用の経験率は20%で、いずれも軽症でした。使用者の70%が症状の改善やQOLを自覚し、劇的な有効性を自覚しているのは20~30%でした。

最後になりましたが、調査にご協力頂きました皆様に感謝を申し上げます。


執筆:正高佑志(医師・Green Zone Japan 代表理事)

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