・CBDオイルは舌下投与がスタンダード
CBD製品のうち、最も基本的なのはオイル製品です。大麻草から抽出されたCBD単体(アイソレート)は白い粉なのですが、これは脂溶性成分であり水には溶けません。粉のまま口から摂取することも可能ですが、食用油に溶かして摂取した方が吸収効率が高まることが知られています。(ほうれん草はバターでソテーした方が栄養素が吸収されやすいと言われていますが、それと同じ理由です。)
CBDオイルはドレッシングのようにして食べることもできますし、肌に塗ってもいいのですが、最もコスパの良い摂取方法は舌の下にオイルを垂らして数分ほど置いてから飲み込むこととされています。これを舌下投与と言います。(これはCBDに限った方法ではなく、たとえば心臓の血管を拡張させる薬(ニトログリセリン)も同じような使い方が推奨されています。)
舌下投与ではCBDは舌の静脈から吸収されます。舌から全身の血液循環に入ったCBDは、肝臓を通過する前に全身の細胞に行き渡るのです。肝臓は様々な生理化合物の分解工場であり、肝臓に入ったCBDは代謝されてしまいます。腸から吸収する場合、吸収されたCBDは血流に乗って肝臓へ直行するので、舌下投与は理論上、コスパが良くなると考えられています。
実際に大麻由来医薬品として製薬会社が製造する製品は、SativexもEpidiolexも口腔スプレーという形態が採用されています。これも口腔内の粘膜から吸収させることで、コスパが高めることを期待して設計されていると考えられます。
・本当に意味があるの?
しかしこの舌下投与・口腔内粘膜投与というのは、理論上は正しくても実際には機能していないのではないかという指摘がなされています。仮に口腔粘膜から吸収されているなら、舌下投与製剤の吸収に関して、食前・食後の影響はないはずです。しかし現実的にはSativexの血中濃度などに関しても、食事の影響は認められるようで、これは実際には、製剤の大半が唾液とともに飲み込んでから吸収されているのではという仮説を支持するものです。
(CBDオイルの摂取に関しても食後の方が吸収効率が高いことがメタ解析の結果明らかになっています。)
・オイルの舌下投与VSカプセル内服の比較検討
この疑問を解消するために、イギリス・ラフバラー大学の研究チームが検証実験を行いました。
彼らは8名の健康な成人男性被験者を募集し、同量のCBDを含むカプセルとCBDオイルの舌下投与を、それぞれクロスオーバーして投与し血中濃度を比較しました。その結果、CBDオイルの舌下投与とカプセルの経口摂取では被験者のCBD血中濃度にほとんど違いがないという結果が得られたのです。
・この研究から言えること
本研究は小規模なデザインであり、これだけをもって舌下投与が無意味だと断言することはできません。依然として理論上は舌下投与に理があるのは間違いありません。一方で、従来考えていたよりも現実的な差は小さく、特に小児や全身状態が悪く意思疎通が取れない症例では、そこまでして舌下投与にこだわる必要がないということが本研究からは言えそうです。また利便性の上でカプセル製剤などを選択することのメリットが相対的に高まる結果と考えることもできます。
大切な事は舌下投与・経口投与の差よりもしっかりとした投与量で継続することと言えるでしょう。
執筆:正高佑志(医師・Green Zone Japan代表理事)
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