CBD製品は、含有成分によってアイソレート、ブロードスペクトラム、フルスペクトラムのいずれかに分類されます。理論上、フルスペクトラムやブロードスペクトラムの製品にはアントラージュ効果が発生するため、アイソレートよりも薬理効果が高いのではないかと考えられていますが、科学的な検証は十分に行われているとは言い難いのが現状です。また微量THCを含有しない製品にも同等の薬効があるのかも、ほとんど検証されていません。
この課題に関して、2023年11月にデトロイトのウェイン州立大学の研究チームが興味深い論文を発表しています。
彼らがテーマとして選んだのはCBDのストレスケア効果でした。我々の行った国内調査でも“ストレスケア“はCBDの用途の最上位に位置していますが、その効果についてもまたしっかりとした評価はおこなわれていませんでした。
この研究はCBDistilleryという企業のマーケティングの一環として行われ、ストレスケアに対してCBD製品の使用を希望する18歳以上の米国在住者を対象として、ウェブ広告による参加募集が行われました。簡単な適性スクリーニングをクリアした参加者は“Stress Pathfinder Mission”と命名されたプログラムに参加を招待されました。これは30日と60日の2コースが設定され、それぞれ前半はCBDアイソレート製品を、後半はブロードスペクトラム製品をそれぞれの判断で適量使用し、使用後にそれぞれの製品の評価をウェブフォームに入力するという形で情報を収集しました。
製品はアイソレート、ブロードスペクトラム共に約4%のティンクチャーが採用されました。ブロードスペクトラム製品にはCBD以外にCBGとCBDVが含有され、そのほかにα-テルピネン、リモネンやプレゴンなどのテルペンが含有されていました。
6781名の応募があり、そのうち480名に製品が送付されました。そのうち374名が調査を完遂しました。参加者のベースラインのストレス値は30日コースで8.51、60日コースで8.39でした。ストレスの原因等は以下の通りでした。
参加者のCBD平均使用量は55%が15~35mg、35%が36~70mg、8%が71~100mg、2%が100mg以上でした。
参加者の自己評価ではアイソレート・ブロードスペクトラム製品のいずれも効果が実感されましたが、効果はブロードスペクトラムの方が高いと実感されました。(30日:7.83 vs 7.14、60日:7.88 vs 6.64)またストレス管理に役立つかどうかという質問でも、ブロードスペクトラム製品の方が高く評価されました。(30日:7.71 vs 6.89、60日:7.58 vs 6.36)
一方で味に関しては、アイソレート製品に上がりました。実際、30日間コースでは、アイソレート製品の味に対する平均評価は5点満点中3.92点であったのに対し、ブロードでは平均3.58点でした。60日間コースでは、アイソレート製品の味の平均評価は4.3点であったのに対し、ブロードスペクトラム製品の平均評価は4.02点でした。
副作用に関しては両者に差はありませんでした。
この研究の結果から、THCを含まない製品においても、アントラージュ効果は発現し得ると著者らは結論しています。(投与の順番が全員アイソレート→ブロードなので、投与順が結果に影響を与えた可能性は否定できません。)一方で、アイソレート製品にも味に関するメリットがあり、かつ評価の差は20%程度であったことを考えると、金額や味の好みによってはアイソレート製品を選択肢、負担なく使用継続する方が良い結果が得られる場合も多々あるように感じられます。
正高佑志(医師・Green Zone Japan代表理事)
コメントを残す