大麻は医療目的に使用される場合も、高頻度に喫煙という摂取方法が選択されます。これは医学的には好ましいとは考えられていません。というのは、燃焼に伴い発生するタールには健康上好ましくない成分が含まれますし、そもそも大麻に含まれる成分のどれだけが体内に取り込まれ、どれくらいが煙として放出されているのか把握が難しいからです。この喫煙という不確定な摂取方法に対して、科学的な検証を行おうという取り組みを紹介します。
2017年にニュージーランドの研究チームが行った実験によると、ジョイントを燃やした際に発生するTHCの大半は副流煙などとして放出されるため、喫煙した際に吸収されるTHCの割合は平均すると含有総量の12.6%(7.2%〜28.0%)に過ぎないそうです。
この摂取効率をどうやって高めるかについては吸い方も影響することが明らかになっています。
オランダ・レイデン大学薬学部の研究チームの実験では、ジョイントを吸う際に利用されるTHC量を増やすためには、頻繁に吸うこと(30秒、60秒と比較して15秒間隔)、ゆっくり吸入すること(1puffを2秒かけて吸入するのと比較して4秒)、一呼吸を大きく吸うこと(25mlと比較して50ml)が効果的であるとの結果が示されました。特にゆっくり吸い込むことが大切というのは意義のある所見でしょう。
類似の研究として、オクラホマ州立大学の研究チームが2021年に“大麻を吸うときに、どのような呼吸が最適なのか?“について研究しています。こちらの実験によると、4秒間で吸い込んで、10秒間息を留める方が1.6秒間で吸って11.4秒息止めするよりもTHCの吸収が良かったと報告されています。
また吸い方以外にTHCの利用効率を向上させるための方法として、ジョイントにタバコと混ぜるのも効果的と考えられています。
2009年に先述のレイデン大学の研究チームが行った研究によると、タバコを混ぜることで大麻1gあたりに吸入されるTHC量は、大麻100%のジョイントにおける32.70±2.29mg/gから、大麻25%のジョイントの58.90±2.30mg/gへと増加しました。タバコがTHCの気化効率を試験条件下で45%も高めたことになります。
さらにイスラエルの大麻企業であるBazelet Groupが2023年に報告した論文によると、ジョイントを吸入する際の気化成分量は、吸い始めと吸い終わりに近い部分では変化することも科学的にわかってきました。
大麻に含まれる有効成分には主にカンナビノイドとテルペンが含まれ、さらにテルペンはモノテルペンとセスキテルペンに分類されます。モノテルペンはセスキテルペンやTHCなどのカンナビノイドよりも沸点が低いため最初に気化します。つまり味や香りに関しては、理論上は一口目が風味が強いことになります。一方で、セスキテルペンとカンナビノイドは相対的に揮発しづらいため、濃縮してジョイントの後半に蓄積していく傾向があることが明らかになりました。そのため、例えば1本のジョイントを朝と夕の2回に分けて吸う場合などには、後半半分の方が含有されるカンナビノイド量は2倍ほど多くなる可能性があります。
喫煙以外の気化吸入方法としては、専用のベポライザーであるボルケーノなどを使うという選択肢があります。通常、タバコの先端温度は470-820℃にも達しますが、ベポライザーではより低い温度で燃焼させることなく成分を気化させることが可能ですが、設定温度は重要な要素となります。
2009年のレイデン大学研究チームによると、230℃で発生させたスモーク中に含まれるカンナビノイド量は標準的な喫煙よりも高く、逆に170℃で発生させた場合は含有比率が悪かったことが報告されています。
ティンクチャーと比較して、喫煙が嗜好色の強い投与経路であることは否定できませんが、効果の迅速さや用量調整の簡便性などの多くのメリットが伴うのもまた事実です。世間的な偏見が緩和され、薬草を喫煙することの市民権が認められることを願っています。
正高佑志(医師・Green Zone Japan代表理事)
コメントを残す