線維筋痛症と医療大麻3 / 慢性疼痛に対する医療大麻ガイドライン

2024.08.13 | 大麻・CBDの科学 病気・症状別 | by greenzonejapan
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線維筋痛症と医療大麻3 / 慢性疼痛に対する医療大麻ガイドライン
2024.08.13 | 大麻・CBDの科学 病気・症状別 | by greenzonejapan

医療大麻の効果が期待されている病気の一つに線維筋痛症があります。
線維筋痛症とは原因不明の全身の痛みの病気です。全身の痛みは天候やストレスなどの影響を受け、不眠やうつ病などを併発する難病です。線維筋痛症は、寒暖差やストレス、台風など、日常の小さな変化にも痛み神経が反応し、日本でも、約200万人の方が悩んでいます。

この病気に対する医療大麻の効果について、我々は2017年と2020年に紹介してきました。

2017年の過去記事

2020年の過去記事

これらで紹介した研究の大半は、“観察研究“と呼ばれるデザインであり、研究者が介入するものではありませんでした。近年になり介入研究が実施され良好な成績を示しているので今回、改めて紹介します。

1本目の研究は、オランダ最古の大学であるライデン大学麻酔科の研究チームが、同じくオランダの大麻企業であるBedrocan社と共に行ったランダム化4群クロスオーバー試験です。この研究では線維筋痛症患者20名を対象に、3種類の大麻品種をそれぞれ1回、気化吸入で投与し3時間後までの鎮痛効果をプラセボと比較評価しました。使用された大麻は、①べドロカン(THC優位)、②ベディオール(THC:CBD=1:1)、③べドロライト(CBD優位)の3品種でした。
結果、ベディオール(1:1品種)を投与された被験者ではプラセボと比較して疼痛スコアが30%減少しました(90% 対 55%、P = 0.01)THCを含む大麻品種では、プラセボと比較して圧痛閾値が大幅に上昇しました。

二報目は2020年、ブラジルのサンタ・カタリーナ連邦大学によるランダム化比較試験です。この研究では17名の線維筋痛症女性に対して、THC=24mg/ml、CBD=0.5mg/mlの大麻オイルを1日1滴(THC約1.22mg、CBD約0.02mg)から自己判断で漸増し、プラセボを投与された群と比較しました。
治療導入後、実薬群はプラセボ群と比較して、また実薬群の介入前スコアと比較して、線維筋痛症の重症度スコアの有意な低下を示しました。スコアの個別の項目を分析したところ、大麻オイルを投与された群は“気分“、“痛み“、“仕事ができるかどうか“、“疲労感“のスコアで有意な改善を示しています。

これらの複数の研究成果に基づき、治療ガイドラインが提唱されています。2024年4月に、Cannabis and Cannabinod Researchに掲載されたカナダの研究者らによる“慢性疼痛についてのカンナビノイド医薬品ガイドライン“は165件の論文の全文レビューを基に作成されています。

そこでは“中枢神経障害性疼痛、また末梢神経障害性疼痛を含む慢性疼痛の管理に、単剤療法、代替療法、または補助療法としてカンナビノイド製品を使用することを強く推奨する。(エビデンスレベル:中)“と明記されています。
また神経痛以外の慢性疼痛に関しても、他の治療法で十分な効果が得られない場合の日常行動を向上させるために、カンナビノイド製品を単剤療法、代替療法、または補助療法として使用することを推奨する。(エビデンスレベル:低)とも書かれています。

このガイドラインに従うと、線維筋痛症によって日常生活に支障が出ている方がCBD製品や医療大麻を使用することは科学的根拠をベースとしたガイドラインに沿った治療選択肢であり、国や医療業界からもサポートされるべきものと言えるでしょう。

執筆:正高佑志(医師・Green Zone Japan代表理事)

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