THC閾値細則の課題点について

2024.10.13 | 国内動向 安全性 | by greenzonejapan
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THC閾値細則の課題点について
2024.10.13 | 国内動向 安全性 | by greenzonejapan

2024年12月12日から開始される日本のカンナビノイド製品についての新規則に関して、2024年10月4日に追加細則が厚労省監視指導麻薬対策課から発表されました。

前回、2024年9月11日に発表された政令詳細では、THC閾値について以下の3分類が示されたのは先述の通りです。

①油脂・粉末(10mg/kg=0.001%=10ppm)
②水溶液 (0.10mg/kg=0.00001%=0.1ppm)
③その他(1mg/kg=0.0001%=1ppm)

今回の発表では、“油脂“や“粉末“についての詳しい定義が公表されました。それによると、油脂とは“グリセリンと脂肪酸が結合した化合物を 90%以上含むもの“であり、かつ常温(15-25℃)で液体状であることとされています。また粉末の定義は、“粒子の大きさが850μm以下であること“とされました。また様々な剤形のカンナビノイド製品に対して、概ねどの閾値が適用されるかについての指針も発表されました。詳細は以下の通りです。

10ppm基準の適用が予想されるもの
・CBDオイル、ヘンプシードオイル、化粧オイル等(植物油】
・CBDパウダー、プロテイン等【粉末類】

0.1ppm基準の適用が予想されるもの
・清涼飲料水、アルコール飲料、化粧水
・牛乳、植物性の飲料等【コロイド溶液】

1ppm基準の適用が予想されるもの
・菓子類、錠剤、バター等【固形物全般】
・電子タバコ等【グリセリンと脂肪酸が結合した化合物、水を含まない有機溶媒製品】
・シャンプー、リンス、乳液、クリーム、マヨネーズ、バーム、ドレッシング等【粘性が高い、若しくはグリセリンと脂肪酸が結合した化合物の含有率が高い、又はその両方の水との混合物】
・ゼリー等【ゲル状でグリセリンと脂肪酸が結合した化合物を含まない半固形物】

この内容に関しては、引き続きいくつかの問題点が指摘できます。
1点目はカンナビノイド原料の多くに対して1ppm制限が適用されてしまうのではないかということです。5月に初期案が公開され、パブリックオピニオンが募集された際に最も多かった意見の一つは、カンナビノイド原料に対する基準値が設定されていないという問題でした。原料を希釈して製造される最終製品と濃縮原料を同じ基準で判断すると、原料の輸入自体が困難となるとの指摘を受けて、厚生労働省は新たに“粉末“というカテゴリーを10ppm制限枠に追加しました。しかし、カンナビノイド原料の多くは粘性が高く、今回の細則で示された850μm以下の粒子形状を安定して保つことができるのは、CBDアイソレートパウダーなどの一部の限られた製品に限定される見込みです。粉末区分の追加がカンナビノイド原料への規制緩和を本来の趣旨としたものだとすれば、これは不十分な制度設計と言えるでしょう。

二点目の問題点は油脂の定義です。今回の文中にある、”グリセリンと脂肪酸が結合した化合物”とは、MCTオイルなどのカンナビノイドを希釈するためのキャリアオイルの成分です。ですのでキャリアオイルを90%以上含むものだけが油脂に該当するというルールを厳格に守るなら、オイル製品に含有できるカンナビノイドの最大量は10%ということになります。(10%を超えると油脂の定義を満たさなくなるため、自動的に1ppm制限が適用されることになります)市場のCBDオイルのカンナビノイド濃度は5~40%程度が一般的であり、今回の油脂の定義は事実上のCBDオイル濃度規制となる可能性があります。またCrude Oilなどの一部の濃縮原料も今回の油脂の定義には該当しないため日本への輸入は困難となる可能性があります。

これらの問題を解決するためには、規制カテゴリーの中に粉末に加えて固形原料、液体原料などの区分を追加することや、油脂の定義を“カンナビノイドを除く成分の90%以上がグリセリンと脂肪酸の結合した化合物“と定義し直すことなどが必要と考えられます。

執筆:正高佑志(Green Zone Japan代表理事・医師)

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